■男女比が偏りすぎた世界を描くにあたって「いい意味での違和感」を大事にしてきた

───担当編集さんからみた「終末のハーレム」の第一印象はどんな感想だったんでしょうか?

担当編集:私は最近新しく担当についたのですが、当時はまだ学生として、普通に読者として読んでいました。やっぱり第1話の、あの見開きですよね。「なんだこれ!?」って。もちろん、いい意味ですよ!(笑)

LINK:セクシー系やお色気を売りにした漫画は世の中にたくさんあります。新連載は、その中で目立たないといけません。他のセクシー系漫画と一線を画す作品であることを、最初から読者に提示したかった。そのための見開きカラーだったんです。

───当時はSNSでも話題になりました。

担当編集:今は担当編集としてLINK先生と打ち合わせする立場になりました。その中で「いい意味での違和感」ってワードがよく出てくるんです。当時は一人の読者として第1話の見開きカラーで、それを身をもって体感したという(笑)

LINK:「いい意味での違和感」は作品を通してずっと大事にしてきました。男女比が偏りすぎたハーレムという異常な世界なので、あのカラーページはある種、それを象徴するシーンとして示せたと思います。

■SFと学園物、全然テイストの違う話が同じ世界観で楽しめる事が長所

───序盤の近未来SFから、いったん土井翔太の学園物へ雰囲気がガラッと変わりました。SFと学園ラブコメを描き分けることは大変だったのでは?

LINK:いえ、それはないですね。SFの本筋と学園物、全然テイストの違う話が同じ世界観で楽しめることが、むしろ「終末のハーレム」の長所かなって自分では思っています。

宵野:学園の描写は大きなお友達向け雑誌でたくさん描いていたので、やりやすかったです(笑)

LINK:まだ5人目は登場していませんが、この作品はそれぞれ5人の男性が、それぞれ違った世界との向き合い方をしているんです。
火野恭司と翔太は、スタンスの違いがあれど「男だったら、こういうことするよね」っていう。一番普通に今の状況と向き合っています。

LINK:怜人が一番、世界との向き合い方が異常と言えるのかもしれません。女性といちゃいちゃエッチなことをする事が奨励されている世界なのに、その欲望を抑制しているわけですから。

───確かに、自分だったら恭司や翔太みたいにハーレムを満喫しちゃいます。

LINK:恭司は女好きで、明るくて、女性に求められるがまま致してヤッホー!っていう、一般的な男性代表です。翔太の場合は、シチュエーションの嬉しさですよね。元々虐げられてた男が、皆さんが経験している学校という場所で、女子たちにチヤホヤされる。そこにも男子たちの夢や願望があるんじゃないかなって。

宵野:いじめられていた子が段々と喜びに目覚めて、成長してからは女の子が寄って来てくれる。そんな状況って、私が大好きなシチュエーションなんです。翔太たちの関係が変化していくのは描いていて楽しいですね。

■魂がこもっていてこそ、フェチは伝わる

───恭司たちがモテている中、4人目の木根渕善。彼だけは捕まってドMにされたり、別人格に豹変したりと不憫なんですが……。

LINK:大丈夫です! ちゃんとこの後、善も物語に絡んできますので乞うご期待です!
UW日本支部は一応、怜人や恭司たちの人権を大事にしてる組織なんですよ。つまり我々が生きている社会の延長線上にある文明なんですけど、こんな世界になったら、人権なんか一切無視して「子作りしまくれ!」って命令してくる状況もあるだろうなって。それがイザナミ編、善のパートになっています。

───アダルトの性癖で、○○管理ってジャンルがあるんですけど……。

LINK:まさにそれをやりたかったんですよ。イザナミによって管理されている善の状況がお好きな人に、ぜひ届いて欲しいフェチズムです。

宵野:私も聖心祓穢(せいしんばつわい)、好きなんですけど。

(一同笑い)

LINK:関係者は結構好きって言ってくれるんですよ、あのシーン(笑)。

宵野:目覚めたばかりの善は、状況が掴めずにオロオロしてばかり。けど何か快感があるって部分を徐々に広げていく流れで、ああいうシーンはもう1度描きたいですね。

───取引先の嫌な上司の奥さんが迫ってくるのもグッときました。

宵野:しかも母娘でね!(笑)

LINK:あのお母さん(安保ころん)、第2回人気投票で2位で、読者人気の高いヒロインとして受け入れていただけました。私としては、このまますべての性癖を網羅したいんですよ。前の担当編集と「そろそろ金粉まみれの女性を出しますか?」って話もしていたくらいですし(笑)

担当編集:もういよいよネタが尽きてきたら、金粉もやるしかない。

宵野:でも金粉ってカラーじゃないと伝わらないじゃないですか、モノクロだとどうしよう……(笑)

LINK:もちろん冗談ですけど、そういう話が出るくらい、制作者として全性癖を網羅したい願望があります。
ただ、やっぱり作り手側がシンパシーを感じる性癖じゃないと、読者に刺さらないんですよね。本当は私が金粉大好きだったらよかったんですけど、ギャグとして好きなだけなので……。

───そこで本気のフェチの方に「エロい」と思わせたら勝ちみたいな。

LINK:はい、最低でも関係者の誰かの性癖が入ってこそ、「こういうのがいいんだよ!」って受け入れてもらえる。魂がこもっているからこそ、フェチズムって伝わると思うんです。これからも工夫しながら、皆さんに刺さる性癖を描いていきたいです。

───11巻まで描いても、まだ全然足りないと。

LINK:足りませんね(笑)。食欲も性欲も一時的には満足しますが、生きていくからにはずっと続く欲求なので。時間が経てばまた欲しくなりますし、世の中から性欲がなくなることはないと思います。やれることはまだまだ多いですね。

───宵野先生の魂が乗っている、印象的なシーンはありますか?

宵野:アナスタシアが自分の体にワインを垂らすシーン! 美しいけどちょっとエロくて、でもエロさだけじゃない部分がグッときます。アナ姫というキャラクターとも合っていた、お気に入りのシチュエーションです。

宵野:後半はアナ姫と冰冰が登場してから、女性同士でわちゃわちゃするシーンが増えました。合コンでポッキーゲームをしたり(笑)。
2人とも可愛らしさが出せるし、セクシーなシーンもあるし、キャラの幅がとても広がりました。