元週刊少年ジャンプ編集者が
漫画家から学んだことを書いていく




2020-11-27

第12回 「ジャンプの漫画学校」講師をやった感想

前回からずいぶん間が空いてしまいました。すみません。


実は私、7月に異動して週刊少年ジャンプ編集部の副編集長となりまして。
そこで頭を悩ませたのが…そもそもこのブログ、タイトルが
「元週刊少年ジャンプ編集者が漫画家から学んだことを書いていく」
…なんだけど、異動して戻ったら「元」じゃなくなるよね?どうなんだ?
とブログを自分に書かせた張本人・モミー(@momiyama2019)に話したところ、
「作品を担当する現役編集者なわけではない管理職なんだから、このままでいいんじゃん」
…というわけでタイトルはこのままで、もう少し続けてみたいと思います。
(少年ジャンプの副編集長は漫画を担当せず、現場のバックアップするのが主な仕事です)


編集部の人間ではありますが、あくまで自分の経験談を言語化しているだけであり、ジャンプとしての正解を書いているわけではないので、今まで通りあくまでイチ意見として読んでいただければ幸いです。

さて、「ジャンプの漫画学校」が始まってから3か月ほど、計6回の授業がありました。

>>詳細はこちら!<<


今回はちょっといつものブログとテイストを変えて、僭越ながら何回か講師として参加した身から、振り返ってみたいと思います。



よかったこと



・自分の性に合うスタイルを見つけられる
基本、お題を決めて数人の編集者でしゃべる形式をとっているのですが、「多様なアプローチを仕入れられる」というのは大きなメリットかなと。


たとえば僕が担当した時のお題は「企画(どんな漫画を描くか)の考え方」。編集者3人でしゃべったところ、強調するポイントは三者三様でした。


齊藤は
・「多くの人が抱いている『ジャンプらしい企画』『少年漫画っぽい企画』のイメージで描く漫画は、得てして間違っている上に埋もれてしまうのでまず忘れてほしい」
・「作家さんが描きたい漫画」と「作家さんに本当に向いていて、かつ沢山の読者に支持される漫画」が常にイコールとは限らない
ので、「企画」というアプローチは、より多くの人に読まれるための戦略の一つとして使うと、自分では気づいていない可能性が見つかる
…と言う話を。


大西さん(少年ジャンプメディア編集長)は「作家自身の長所を生かし、短所をカバーできる題材か」「作家自身が理解できる、もしくは深めたいテーマ・キャラかどうか」を重視。


中路さん(少年ジャンプ+副編集長@nakaji2017)は,
「みんなが知っている料理だったり魔法だったりの普通なネタでも、別の何かとの組み合わせ次第で新しい企画が生まれる。アイディアを掛け合わせよう」と、内容が全然違いました。
さすが「食戟のソーマ」担当。
(1時間の、それも一部分を3行でまとめてるので、けっこう言葉足らずですが)


当然、どうやって作られるかは漫画の面白さや評価には関係なく(時間をかけて生まれた漫画=面白い漫画、とは限らない…みたいな)、作家さんの描きやすい「フォーム」を見つけられるかが何より重要です。
プロの作家さんは、漫画を描く道具も積極的に試しまくって、自分がより描きやすい物を探しています。(キャリアが長い作家さんも、人によっては頻繁に道具を変えています。)
それと同じく、参加している生徒さんには、「なるほど、そんなやり方もあるなら一度試してみるか」と、どれかが性に合う、または見つけるきっかけになるといいなと思いながら喋っています。


・一度にたくさんのプロ作家さんの実例が聞ける&作家さんが直接喋る
これは現在商業雑誌で編集者と共に漫画を描くメリットだと思っているのですが。
編集者は、新人作家さんに「担当しているプロ作家さんが、どんな風に漫画を描いているか・どんなことを言っているか」という話をよくします。やはり漫画を描いていない編集者よりも、実際描いている作家さんの言葉はより芯を食っており、新人作家さんに刺さるものが多いのです。
なので、今回の講座でも折に触れ実例を出してしゃべっているのですが。
百戦錬磨のジャンプ作家の逸話を聞ける、それも一度に複数…なんて機会は今まで存在しなかったので、貴重ですね。というか、他の編集者から初めて聞くネタも多く、自分も毎回唸っています。


そして直近2回は秋本治先生、稲垣理一郎先生、賀来ゆうじ先生、助野嘉昭先生、松井優征先生、LINK先生…とヒット作家さん方が直接講義をする回だったのですが。やはり編集者よりもはるかに刺さる言葉で話されるなぁ…と、講義を見て圧倒されました。


・楽しい
漫画の話は、正直いくらでも喋っていられる…



個人的に大変だったこと

・一度に大勢の作家さんと向き合うのが難しい
大勢の作家さん相手に話す際、何が大変かと言うと、「共通言語が人によって違う」ことです。

新人作家さんとの打ち合わせは、「あの作品のアレみたいな…」という、お互い知っている作品を介してイメージを共有する・共有できるようお互い課題作品を読み合います。

今回の漫画学校でも、作家さんに参考にするための「自分にとってバイブルの漫画」と「いま続きを楽しみに読んでいる漫画」を事前にアンケートとったのですが、見事にバラッバラでした。

そのため、人によっては読んでいない作品を例に説明するシチュエーションもあり…
なので、できるだけ読んでなくても通じる話にしようとしつつ、ただそうすると突っ込んだ内容になりきらないことも…これは課題ですね。

・質問が尽きない!!
これは大変というよりは嬉しい悲鳴ではあるのですが。質問の量がスゴイ!どれも具体的で良い質問なので、毎回答え切れないまま終了になってしまう…!これも課題です。


以上。
そして「ジャンプの漫画学校」授業内容の一部を、WEBで公開する予定もあるらしいので、そちらもご期待くださいね。